恐竜版あらしのよるに『さよなら、ティラノ』

肉食を止めたティラノサウルスのティラノと、
飛べないプテラノドンのプノン変わり者二匹の交流を描いた映画。

宮西達也作の絵本「ティラノサウルス」シリーズを原作にしていて、
坂本龍一さんが主な音楽を担当。

管理人も元々ジュラシック・パークや小学館の恐竜図鑑、
どうぶつの森で恐竜の化石を発掘する要素で恐竜が好きだったし、
主演の三木眞一郎さんを始め、好きな製作陣が多く参加していたので
興味を持って視聴した。

ただ、まず気になるのは『さよなら、ティラノ』と言うタイトル。
これだけでティラノがいなくなる内容だと予測できてしまい、
結末を見る楽しみが薄れてしまいそうけど、
それなら道中の内容でカバーできるか?
……残念ながら、『あらしのよるに』を知っていると目新しくない設定。
それに加え、天国や浮遊する実などのファンタジー要素も詳しく解説されず、
伏線回収がすごい!という訳でもない、
平凡な冒険物という印象が強いせいで、
どうにも途中で飽きが来てしまった。

そもそも、ヒトは自分たちが雑食動物だからか
食性が本来と反転している設定の動物キャラクターを作りがちだけど、
肉食動物が肉を、草食動物が草を食べるのは歯や消化管の違いも大きく、
それだけでも栄養が偏るということもないので、
雑食動物のヒトの視点で実在(した)動物の食性を変え、
その上で肉食動物を悪しきように描くことには強い疑問を感じる。
(確かにティラノが肉食を止めた理由は語られるけどプノンは不明)
少なくとも、恐竜や動物を好む立場にとっては、
そのエゴとも考えられる設定が目につくと
どのような内容であっても感動より懐疑心が勝ってしまう。
しかもこの手は大抵メスの肉食恐竜が不遇なのは何故なのか……😅

肉食恐竜が悪者のような外見や振る舞いということを差し引いても、
ティラノサウルスなのに角や背中にギザがあり、
むしろケラトサウルスの特徴に近いなど、
恐竜のデザインが全体的に実物と乖離していたり、
プテラノドンも肉食と言いつつどっちつかずの描写だったため、
恐竜好きの立場の一人としてはどうしても不満を覚えてしまった。
純粋にストーリーを楽しもうにも、
目新しさの薄さや説明不足が目につき、飽きやすいと言う印象だった。

作画、音楽、声優陣はすごく良かった。
ティラノ役の三木眞一郎さんも、ポケモンのリザードン役で
恐竜・怪獣役のイメージもついていたので違和感がなかった。
原作のイラストも使われていて、主題歌「楽園をふたりで」も名曲。

ただ、坂本龍一さんは動物や環境を愛する人物としても有名で、
森林保全団体「モア・トゥリーズ」の創立者でもあった。
そのため、肉食を悪しきように描いた本作の内容は
坂本さんの価値観とは合わなかったのでは?と思ってしまう。
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2 Comments

ツキカゲ

R・チョロさん、こんばんは。私は、この作品はテレビの映画宣伝で「坂本龍一さんが音楽を担当している」と知り、興味を持ちました。

私は坂本さんのファンで、音楽の他に地球環境を考えた活動もされたので凄く尊敬しています。CDや「モア・トゥリーズ」の記事が載っている雑誌も買いました。
又、東京で開催された「モア・トゥリーズチャリティー写真展」に行った事があり、その時に貰ったパンフレットと「プリント入り木のミニ立方体(正式名不明)」は、今でも大事にしています。

その様な活動をされた坂本さんが関わった映画なので「凄く感動出来るんだ」と凄く期待してましたが、R・チョロさんの仰る通り「恐竜版あらしのよるに」の一言でした。

私は「あらしのよるに」も観ましたが「肉食の狼を性欲&群れをヤクザの様に描いていて、凄く嫌な気分になった」という記憶しか無く、それが今でもトラウマになってます。

私は図鑑で「実際の狼は家族愛&群れの絆が強く優しい」と知り、狼が好きになりました。又、写真や映像を観ても「俊敏で賢く、スマートで格好良い」「肉食だけど、表情が豊かで優しい顔もする」という印象が強いです。
※埼玉県秩父市にある「三峯神社」は狼を祀っていて、ご利益が「夫婦和合」「家内安全」という、実際の狼の良さを活かしています。

実際、北海道の旭山&円山動物園に行き、狼を見ましたが「あらしのよるに」の様な雰囲気は全く無く、親しみ易い顔でした。その写真を知人に見せたら「狼って優しい顔してるんだね」と驚いてた位、漫画&アニメ&絵本の印象とは全然違ってたみたいです。

宮西達也の「ティラノサウルスシリーズ」も読みました。

個人的に「あらしのよるに」との共通点は
・肉食生物=悪者&怖い&凶暴
・肉食をやめた主役が善として描かれ、相方を守る為に死ぬ
・「肉食で生きるより、自己犠牲で死ぬ方が素晴らしい」的に描かれる
・絵本版は、シリーズを追う毎に、肉食生物が悪の様に描かれる

だと思っていて、そういう点だけが強く印象に残る不快な作品でした。

後「さよならティラノ」は韓国語版もあり、そのティラノがジャイアン(木村昴さん)みたいな太ったキャラの声なので、日本語版が三木眞一郎さんだったのが驚きでした。

私も「ティラノは鼻に角があるので"ティラノサウルスではなく、ケラトサウルス"にしか見えない」と感じます。ケラトサウルスは「ほねほねザウルス」という食玩で知りましたが、個人的に玩具&食玩や雑貨の方が生き物の特徴や良さを忠実に再現してると思います。

「何で三木さんや坂本さんにオファーがあったのか理解不能」と思う位でした。

後「アニアキングダム」のダーク・フレイムは「アニメ映画"あらしのよるに"のギロ」「宮西達也のティラノサウルスシリーズ」をモデルにしたと思ってます。

共通点は
片眼&黒過ぎる配色、怖過ぎ&悪者的な容姿&振る舞い=ギロ
黒過ぎる配色&悪者的な容姿=宮西達也画のティラノサウルス

ですが、こういう「肉食生物を悪の様に描く作品」は、観ていて全く楽しめないのが残念ですね。

長文になってしまい申し訳ありませんが「アニアキングダム」を観ている期間、ずっと「あらしのよるに」「さよならティラノ」が頭によぎってました。

生き物の描き方が似ているなぁと感じます。










  • 2024/03/28 (Thu) 22:10
  • REPLY
R・チョロ

R・チョロ

Re: タイトルなし

ツキカゲさん、またコメントありがとうございます!
記事は空いた時間に下書きを予約投稿したもので、
最近はブログの確認が遅れがちであるため、
コメントの承認も遅れてしまい申し訳ございません……

ツキカゲさんの『あらしのよるに』と
実際のオオカミに関するご意見、正にその通りです。
http://electronicprince2.blog.fc2.com/blog-entry-2468.html
『あらしのよるに』についてはこちらの記事で触れましたが、
オオカミを実際の生態とは異なる描写をしている点が気になったため、
世間の評価とは異なる見解を語らせていただいています。

日本では既に野生のオオカミが絶滅しているにも関わらず、
ネットでオオカミ系モンスターに対し
「オオカミは嫌い」などと言っている発言があるのも、
赤ずきんなどの童話や『あらしのよるに』のように
オオカミを「野蛮・愚か・性的」と言うように
歪曲して描かれた創作が多いのが原因だと思います。
実際のオオカミへの風評被害も甚だしいですね。

ただ、最近では『とんでもスキルで異世界放浪メシ』のフェルは
オオカミをモチーフにしていながら
「強くて頼もしいけど、食いしん坊で親しみやすい」というキャラで、
オオカミを正のイメージで描いていました。
他にもポケモンのルガルガンなども、
オオカミへの負のイメージを払拭させるのに一躍買っているでしょう。
私も個人的にオオカミが主人公のお話を創作していますが、
冷静で賢く、家族や仲間思い」という設定で、
決して「野蛮・愚か・性的」というキャラではありません。
正のオオカミがもっとメジャーになれば、
オオカミや動物を愛する立場としては喜ばしいのですがね。

ティラノサウルスシリーズも肉食恐竜が悪のイメージがありますね。
ティラノサウルス=悪役のイメージは
70年代の『原始少年リュウ』のイメージが根強いのでしょうが、
そのせいでティラノサウルスは実際には家族で生活し、
怪我をしても仲間に餌を分けてもらっていたなどの
最新の知見が反映されにくい印象です。
(ティラノもフレイムも、同族といる場面がほとんどない)
『さよなら、ティラノ』も恐竜の知見の甘さが気になるため、
作画、音楽、声優の他には飛び抜けた点を見出せない内容でした。

肉食動物を悪のように描く作品が未だに多いのは残念ですよね。
動物を幅広く扱っており、
現実的な世界観でなおかつ肉食動物を悪者扱いしていない作品は、
ドキュメンタリーを除けば
『山ねずみロッキーチャック』(1973)程度でしょうか。
主人公はウッドチャックで、
アカギツネやコヨーテなどの肉食動物も登場しますが、
直接的な捕食シーンこそ省かれているものの
肉食動物は悪者ではない
必要以上に人と野生動物が接近すべきではない
ということを作品全体で伝えており、
1973年当時の時代背景を考えるとなおさらすごいと思いました。
(同時期の動物ものは主人公の天敵=悪者という描写がほとんど)

現代では動物を主役にした作品は多くが子供向けと言う扱いですが、
子供向け作品ならなおさら食性差別は不適切で、
教育のためにも実際の生態に忠実に描いてほしい
と思います。